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77話.ゴードンベネット杯の終わり〔後編〕

《 主な登場人物 》
■ジェームス・ゴードンベネット:1860年頃の生まれ。国別対抗戦自動車レースの主催者。
■アルマン・プジョー:1849年生まれ。プジョー兄弟社から独立する自動車ビジネスマン。


プジョー兄弟社ではきしみが起きて、自動車推進派のアルマン・プジョーは独立した


『クルマの歴史300話 第一巻 自動車の誕生』で、主役を演じたアルマン・プジョーは、不思議な存在感を持つ人物である。

ゴットリープ・ダイムラーやカール・ベンツのように自動車の歴史を語るのに絶対欠かせない人物とはいえないが、だからといってアルマン・プジョーが登場しない自動車の歴史などあり得ないというように、自動車という機械を人々の毎日の生活に結びつけるのに貢献した人物として、『第二巻』でも活躍することになる。


19世紀末のプジョー兄弟社はジュール・プジョー社長、社長の兄の長男であるアルマン・プジョー専務、社長の長男のウジーン・プジョー常務という経営トップ体制でフランスナンバーワンの自転車製造業者として隆盛を極めた。

ところがその内実は問題だらけで、アルマンのあまりに強引なやり方に、ジュール社長親子は警戒心を強め、一方、時代に合わせ事業拡大に取り組んできたつもりのアルマンは社長親子の事業センスのなさにあきれていて、両者はいつも衝突ばかりしていて、社内では大きなしこりになっていた。

アルマンは、プジョー兄弟社の経営方針としては、自動車ビジネスの拡大が最優先の課題であると繰り返し主張した。
ところが、スタートしたばかりの自動車ビジネスは順調に発展しているわけではなく、もたもたしていたので、この点をウジーンにつかれて、とうとうアルマンの堪忍袋の緒が切れてしまった。

「ならば、自動車部門は独立するしかない」ということで、1897年にアルマンはプジョー兄弟社から独立して、プジョー自動車会社(以下、プジョー社)を設立して、自分の責任で自動車製造業者としての事業活動を始めたのである。



アルマン・プジョーが発足させたプジョー自動車会社は小型車のべべを生み出した


Peugeot,Armand②第二巻077話
〈自動車メーカーを設立したアルマン・プジョー〉





プジョー社をスタートさせるに当って、アルマン・プジョー新社長は、自動車に全てを賭ける社員との運命共同体づくりに邁進した。
この時代の風潮として、自動車は海のものとも山のものともわからない状況であったが、やり方によっては大きな可能性を持つ産業になるかもしれないという予感はあったので、社員は喜んでアルマンについてきてくれた。
それと、自動車に関心を示す新しい社員も加わって、社内が一本化でき、設立の熱気に包まれた技術陣は張り切って仕事を進めた。

新会社が最初に取り組む仕事は、新エンジンの製作である。
今までは、ダイムラーエンジンをパナール&ルヴァソール社から供給してもらっていたが、今度こそ自作のエンジンを開発する必要があった。

技術陣は総力をあげて、エンジン開発に取り組んだ。
次いでギヤミッション、舵取り装置、制動装置などのメインパーツ、そしてシャシーとボディというように、クルマに必要なあらゆる部品の開発に、スタッフは追われることになったが、新しい息吹に燃えるプジョー自動車会社の社員に何の苦痛もなかった。
通常なら数年かかる新車づくりであるが、アルマン社長の強力な指揮下で、次々と新型車を発表して世間の注目を浴びたのである。


1905年、プジョー自動車会社は排気量650㏄という小型エンジンを搭載したオープン2シーターのコンパクト車を開発した。
フランス語で“赤ちゃん”を意味する〈プジョー/べべ〉という車名で登場したこのクルマは、前進3速トランスミッションを採用、ステアリング形式はラック&ピニオンという新方式が採用された。

このクルマのホイールベースは166センチしかなく、たいへん小さなボディでありながら最高時速は40キロというスピードが出て人気商品に育ち、年産400台の規模になってきた。

ここで注意しなくてはならないのは、この小型車を誰が買ったかという点である。
現代人の発想では、大型車はお金持ちで、小型車は庶民と考えがちであるが、この見方は間違っている。

この時代のフランス庶民は、例え小型車であっても買えるような所得水準になかった。
庶民がクルマを買えるようになるのはもっと後のことで、小型車のオーナーは全てお金持ちであり、奥様用やお嬢様用という2台目、3台目需要がほとんどであった。


peugeot bebe2上077話
←“プジョー/ベベ”のブランドマーク


(〔77話〕はここまでで、〔78話〕は来週の火曜日に掲載。)


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